年上の部下との接し方

日本では少子高齢化が進んでいます。それに伴い、日本企業でも社員の平均年齢が上がりつつあります。そのような状況の中で、「年上の部下」を持つ機会が増えてきています。また「年上の部下」に限らず、定年再雇用者など「かなり年上の先輩」とともに働く機会もこれから増えていきます。そこで、「年上の部下」との接し方についてまとめてみました。

「年上の部下」は何が問題なのか?

そもそも、「年上の部下」がいることは何が問題なのでしょうか。私が今まで人材開発の仕事で接した研修の受講者の声や普段の業務の中で相談を受けたことをまとめると、大きく以下のような2つの悩みがあるようです。

「年上の部下」に関する悩み
  • 「年上」なので、どう接したらいいかわからない
  • 「年上の部下」がなかなか言うことを聞いてくれない

「年上」なので、どう接したらいいかわからない

日本やアジア圏では「年上を敬う」文化があります。 日本では幼い頃から、小学校の道徳の授業などで「年長者を敬うこと」を習います。これは儒教から生まれた日本の伝統的価値観です。

また、日本は「タテ社会」です。日本人は所属する集団の中で、無意識に上下関係を構築します。 中根千枝氏の『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』(講談社現代新書) によれば、日本人は所属する「場」への所属意識が高いとあります。「場」への所属意識が高いと、社歴や年齢などによる「タテの関係」が発達するそうです。

しかし若いうちに出世をすると突然、年長者に対して指示や命令を下す立場になることがあります。あるいはマネジャーやチームリーダーを担っているときに、定年再雇用者が突然チームに配属されることがあります。
すると、「年長者を敬いつつ、指示・命令を下さなければいけない」ことに葛藤することになります。それまで無意識に会社の中で築き上げてきた「タテ社会の価値観」が揺るがされるのです。こうした今までの考えや価値観と異なる出来事が起こることで、自分がどうしたらよいのか悩む方が多いようです。

「年上の部下」がなかなか言うことを聞いてくれない

どんなに指示をしても「年上の部下」がなかなか言うことを聞いてくれない、という悩みも多いようです。

上記の通り日本は「タテ社会」です。いくら組織構造上、年下の上司が偉かったとしても、「社会的・文化的な」上下関係は会社の中での年齢や社歴で決まります。「年上の部下」にとって「年上の上司」は、たしかに上司ですが、「社会的・文化的」には格下の存在なのです。

「タテ社会」では、年長者のほうが経験豊富であると考えられます。いわゆる「亀の甲より年の劫」の考え方です。「年上の部下」からしてみれば、「上司のおまえよりも自分の方が年も経験も上だ」という考えになるのはごく自然なことです。

また、年齢を重ねるとある程度「自分の仕事のスタイル」が定着していきます。「年上の部下」にしてみれば、今までの社会人人生で培ってきた「仕事の進め方」を急に変えることは難しいことです。特に役職定年者や定年再雇用者は、役職者として仕事をしてきた期間が長ければ長いほど「指示・命令される」ことに慣れていない可能性があります。

そのため「年上の部下」がなかなか言うことを聞いてくれない状況は日本企業で特に起こりがちです。「年上の部下」が言うことを聞いてくれないのは、単にプライドがあるから、経験があるからではありません。「年上の部下」も環境の変化や価値観を揺るがされる現象に悩んでいるのです。

「年上の部下」の扱い方

結論から言うと「年上キラー」になることが、「年上の部下」をうまく扱うコツです。「年上キラー」になることで、「年上の部下」は「年下の上司」をリーダーとして認め、積極的にサポートしてくれるようになります。

「年上キラー」になるには?

「年上キラー」になるには、「年上の部下」の「社会的・文化的」な立場である「年齢や経験」に敬意を示すことです。率先して「経験」に関する話を聞くことで、部下の経験を活かした仕事をアサインするのです。
また、「年下の上司」が困ったときに積極的に「年上の部下」に意見を求めることも重要です。こうすることで、「年上の部下」の中で「敬ってくれている」という安心感がうまれ「社会的・文化的」立場を守ることができます。

私も20代の時に40代、50代の部下を持ったことがあります。自分の倍以上の年齢の方と働いたのは大変苦労しましたが、いま振り返ると貴重な体験でした。

「年上の部下」への私の態度を変えた上司からの言葉

私は初めて昇進した際に、チームリーダーとして全部で16名の部下を持ちました。私はまだ20代後半でしたので、年下の部下は2人だけでした。
チームリーダーになった初日に、ある50代の部下から「おまえのことをリーダーとしては認めない」と言われました。
さらに、非効率だった仕事の効率かを進めようとしたところ部下による反乱がおきました。部下2、3人が一時的に仕事をボイコットして収拾がつかなくなりました。

そんな時、当時の上司からこんな言葉をいただきました。

 「年齢と経験だけを敬え」 

会社での立場は私のほうが上なのだから、部下の「年齢と経験」には敬意を示しつつ仕事上では思い切って指示・命令を下せ、という意味でした。
いま振り返ってみるとその上司は、「年上の部下」の「社会的・文化的」な立場に敬意を示し、「組織的」な立場は私が上であることを示せといっていたのだと思います。

また、そもそもの「リーダーとしての姿勢」も改めました。それまでは指示・命令を下すだけのリーダーシップスタイルでしたが、業務量が多いときや部下が大変なときは自ら背中を見せ、率先して仕事をすることにしました。また、積極的に面談も行い、部下の仕事の相談を受けるようにしました。すると徐々に部下も言うことを聞いてくれるようになりました。

その後、私は別の部署に異動することになりました。その際、「おまえのことをリーダーとして認めない」と言っていた部下が「うちの部署の中ではおまえが一番のリーダーだ」と言ってくれました。私はとても嬉しく感じました。

「社会的・文化的」な立場を敬うこと、リーダーとして成長すること、この2つが「年上の部下」と接するコツです。

日本人には「助け合い」の文化もありますので、リーダーが背中を見せて率先して仕事に取り組むことで自然と「年上の部下」も助けてくれるようになります。

「年上の部下」でも関係ない!

「年上の部下」でも部下は部下です。「年上」だろうが「年下」だろうが、部下の能力を引き出し、チームとして成功を実現することが上司の役割です。
部下にはそれぞれ「得意」「不得意」があります。その見極めを行うことも上司の役割です。

私には部下をマネジメントするうえで大切にしていることがあります。
それは、

部下の可能性を信じること

です。
上司が部下を見限ると、それ以上、部下は成長しなくなります。反対に上司が部下の可能性を信じ、部下の得意分野に合わせて仕事を任せることで部下は驚くほど成長します。

私も以前、「あいつは全然ダメだ」といわれていた「年上の部下」をもったことがあります。私はその部下の可能性を信じ、積極的に面談を行い仕事を任せました。その後、その部下は部署の中でハイパフォーマーに成長し、現在は全国レベルのトッププレーヤーとして表彰されるまで成長しました。

誰もがいつかは「年上の部下」になることがあり得ます。もし「年下の上司」が上司になったとき、どんなことをしてほしいでしょうか。
私は自分の可能性を信じ、任せてくれる上司、ともに積極的に働いてくれる上司がいてくれたらいいなと思います。

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